ノートルダム楽派

ノートルダム楽派(Notre-Dame school)は13世紀(1200年前後)にパリのノートルダム寺院で活躍した楽派です。
モーダル記譜法によって作曲された、長く引き伸ばされたテノールの定旋律の上に他声部がメリスマのように細かく動くのが特徴。

テノール音は既存の旋律をそのまま用いたもので、定旋律(ラテン語:Cantus firmus)ともいいます。そのテノール音に支えられた脈動する音楽は、それまでのグレゴリア聖歌やアンブロジウス聖歌のようなモノフォニー音楽(単声部音楽)しか耳にしなかった聴衆には「これぞ天上の音楽」と一層の感動を与えたことでしょう。

作曲者としてはレオナン、ペロタンが有名。

レオナン(Léonin)はラテン語でレオニヌス(Leoninus)。12世紀に活躍し最上のオルガヌム作曲家と評された。

ペロタン(仏語:Pérotin)はラテン語ではペロティヌス(Perotinus)12世紀~13世紀に活躍。オルガヌムを更に発展させる。

12世紀末といえば日本では平安末期、壇ノ浦の戦いがあった時代です。

ペロタン作曲:アレルヤ

モーダル記譜法は現在の音楽理論とは全く別の概念で拍子記号などなく、音符も音価を表しているのではなくモードを表しています。
演奏者は音符の組み合わせから6つのモード(リズムパターン)からリズムを確定させます。

詳しいモーダル記譜法の解説(中世音楽のまうかめ堂)
http://maucamedus.net/modal/modal01.html

まうかめ堂さんは古い英語やラテン語に精通していて、様々な文献を直接読んでいまして、彼の発信する情報の正確性は信用に足り、数少ない中世音楽関係の専門サイトのひとつです。
ご本人はお仕事が大変忙しく、サイトの更新は滞っているようですが(-_-;)

ノートルダム楽派のこの何とも言えないリズムと、激しい不協和音は癖になりそうです。

Leonin: Organum Duplum, "Viderunt Omnes" (comparative transcription)

最上のオルガヌム作曲家と讃えられたレオナンによる Viderunt omnes は私が大学時代に西洋音楽史の講義で曲を聞きながら時代背景とか様式の説明を受けて、中世の音楽に興味を持つ切欠になった曲で今でも好きな曲の一つです。

Perotin – Viderunt Omnes, Sheet Music + Audio

上記のレオナンの曲と同じグレゴリオ聖歌をテノールにしたペロタンの四声の Viderunt omnes(地上のすべての国々は)という曲はwikipediaによると、1198年のクリスマスのために作曲されたものとあります。

ペロタンによって3声や4声の楽曲が作られることで多声音楽が飛躍的に発展しますが、その後このモーダル記譜法の欠陥が明らかになり、それを打開すべくノートルダム学派の次の時代では定量記譜法の時代に移ります。
定量記譜法は此処では詳細は述べませんが、モードから脱却し、音符の分割法(つまり正確な音価)に重点を置いた記譜法になります。また、定量記譜法は◯やCなど現代の記譜法で拍子記号として見受けられますが、これらは拍子ではなく音符の分割の方法を指示したものでした。

LEONIN 'Gaude Maria Virgo'
Pérotin le Grand – Sederunt principes – David Munrow
Perotin – Organum Triplum – Pascha nostrum immolatus